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すでに夜は更けて、鈴虫達が鳴き続けるこの夜。今ここに杏里さんがいることから本当に泊まるみたいだ。
初めは冗談と思ってたけど。
「どれくらいここに滞在するつもりなんですか? 今日一日だけとか」
「一週間くらいお願いするつもりかな? もしかしたらもっとお世話になるかも」
夏休みでの旅行気分で我が家に来たのか。でも杏里さんがいれば賑やかになるかもしれない。
「杏里さん、実は沙里さんと喧嘩してないでしょ」
「えっ!? きゅ急に何を言ってるの!?」
予想以上の慌てようだ。キョロキョロ目を動かして話をそらそうとしている。
「どうして杏里さんは」
「裕大、杏里ちゃん、お風呂入っていいわよ」
一階から母さんの呼び出しがあった。あともう一歩だったのに。
「裕君、先に入らせてもらうねっ」
疾風のごとく部屋から飛び出してしまった。あの様子だと逃げたな。
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