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「多分ドキドキするんですよ」
「………それだけ?」
「はい」
沈黙が広がる。後悔はしていない。俺にとっては正論だ。
正直分かるはずがない。聞くなら俺ではなく恋愛経験豊富な人に聞いたらどうだという話。
「裕君って意外に単純な人なのかもね」
「単純ですか?」
背はこちらに向けたままだ。声だけが聞こえる。どんな表情なのだろう?
「僕、眠くなっちゃったから寝ちゃうね。おやすみ、裕君」
「は、はい、おやすみなさい」
やがて杏里さんは静かな寝息を立て始めた。これから朝まで起きることはないと思う。
さすがに一緒に寝るのには抵抗があるため俺はそっとベッドから抜け出して床で寝ることにした。
夏だから布団はいらない。だけどもなかなか睡眠に入れない。
俺の部屋には冷房がないからな。
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