21717人が本棚に入れています
本棚に追加
本気で怒らせてしまったようだ。澪は猛獣のように俺を睨みつけている。
よく考えてみれば俺は澪を喜ばせるようなことをしたか? 楽しませるようなことをしたか?
澪が俺に見せる表情はいつも不満そうなもの。そうだよ、俺はダメな奴だ。
「どうした? また澪子が何かを?」
琉李子さんが心配そうな表情でリビングに戻ってきた。澪の声も大きかったし。
「琉李子さん、俺お先に失礼することにします」
「どうしたんだ、急に?」
「そうだよ裕君、もうちょっといようよ」
琉李子さんの後ろから杏里さんが顔を出した。
「すみません、ちょっと用事を思い出しちゃって。母さんがかなりうるさいんです。それでは」
俺は立ち上がって玄関へ向かった。これ以上この場にいるわけにはいかない。
すると俺は何者かに服を掴まれた。
最初のコメントを投稿しよう!