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俺が連れてこられた場所は二階。辺りの景色を一面と見渡すことが出来る。
ここはベランダの一角だ。やはり夏ということで外は暑い。
「さてと、いきなり呼び出して悪かったな」
琉李子さんの真剣さは解けて、いつもの爽やかな表情に戻った。
「琉李子さん、澪に何があったんですか? 泣いてたみたいですけど」
「少年、遠くからで聞こえにくかったけど、もしかして『どっかいっちゃえ』と言われたか?」
俺に近付いてきてぐいっと顔を近付けた。
「はい、澪を怒らせてしまったみたいで。実は用事があるってのは嘘で、本当は澪に嫌われたと思って帰ろうとしたんです」
琉李子さんは俺から離れ、ため息をついた。
「澪は嫌なことを思い出したようだな、トラウマってやつだ」
「トラウマ?」
「ああ、そうだ。多分私は澪が少年を嫌いとは思わない。少年なら澪を呪縛から解放してやることが出来るかもしれない」
淡々と話を進めていく。
「では話そう。澪、そして私が経験した忘れられない過去を」
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