蒼天の彼方へ

想い人、琉李子と澪子と

澪子は生まれてからここまで一度も笑顔を見せたことはなかった。

なぜか笑わない。いつも不機嫌そうな表情で一日を送っている。

両親はどちらも優しく笑顔を絶やさない。澪子の性格に当てはまる箇所はどこにも存在しない。

どこから遺伝されたのか検討もつかない。

あの不機嫌そうな表情の奥で実は笑っているのか、それとも本当に笑わないだけなのか。

それでも、少しだけ笑ったことがあるっけ。

確かあれは澪子の誕生日。私達は盛大に祝うけど澪子は笑顔を見せない。

でも私がお父さんに買ってもらったネックレスを澪子に手渡ししたらうっすらと表情を変えたかな。

あの時は嬉しかった。多分あれは澪子の満面の笑み。それが分かっただけでも嬉しかった。

それでも私は澪子に笑ってほしい、顔一面に喜びを表現してほしい。そればかり考えていた。