想い人、琉李子と澪子と

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『おい、本はまだか? 退屈だ』 『ごめんなさい、お嬢様』 リョウ君は急ぎ足で澪子の方へ向かった。澪子に振り回されて大変じゃないだろうか。 澪子のことを気軽にお嬢様と呼んでるけど恥ずかしくないのかな? 男の子ってみんなそうなのかな? 私は今、台所のテーブルの椅子に座って二人の様子を見ている。 少し遠い位置に二人はいるけれど姿は確認出来る。小さな声は聞こえない。それでも何をしているかくらいは分かる。 『むかしむかし、あるところに』 リョウ君が本を両手で大事に持って声を出した。多分澪子に読むように命令されたんだろう。 おそらくリョウ君が読んでいるのは誰もが知っている『桃太郎』。 リョウ君の『桃太郎』を聞いてる内になんだか眠くなってきた。単に本が嫌いで、退屈になっただけだろう。 本を読み終えたリョウ君はすっと立ち上がって私の方に向かってきた。
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