想い人、琉李子と澪子と

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『どうしよう、傘持って来てないよ』 今日はテレビのチェックをしてない。それにここに来る時はさんさんと晴れていた。 誰もこんな雨なんて予想出来ないよ。もしかしたら通り雨かもしれない。少し待ってみようかな? 横では澪子が本を頭の上に構えて今にも走り出そうとしていた。 『澪子、何をやってるの?』 『何って、帰ろうとしているだけだが』 この目は本気だ。迷いがない。 『ダメだよ、本が濡れちゃうじゃない』 『私の服が濡れてしまう』 『その本は借り物なんだから傘代わりに使っちゃダメなの』 『ふむぅ、仕方ない』 澪子は本を下ろした。この子に常識は通用しないのかな? それにしてもひどい雨、言うなればどしゃ降り。これは図書館の中で時間を潰すのが最良だ。 『澪子、中に入ろう?』 『待ってお姉』 澪子が私を引き止めた。
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