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『澪子……』
『おにいちゃんが、悪いんだからっ』
その言葉とは裏腹に拳を握り締めている。果たして怒りをぶつける所がないのか後悔をしているのか。
『悪いのは私だよ。リョウ君は全く悪くない』
『それでも、私のアイスが』
『私が間違えて澪子のをあげてしまった。それを知らない澪子は当然怒ってしまうかもしれないけど急に怒鳴るのはよくないよ』
『あっ……』
澪子がしょぼくれた様子になる。やはり少しでも後悔の気持ちがあったんだ。
『おにいちゃん……』
『リョウ君はどこにも行ってない。ちょっと外の空気を吸ってるだけだよ。すぐに戻ってくるよ』
私は澪子に言い聞かせた。それでも唇を噛み締める澪子の表情が変わることはなかった。
一時間、二時間と経過した。けれどもリョウ君は家に戻って来なかった。
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