憂鬱、ちっちゃな少年

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「ははっ、杏里、嬉しそうだねぇ」 「……はっ! う、嬉しくなんてないもん!」 からかう琉李子さんを杏里さんは顔を真っ赤にしたまま追い掛ける。ソファの周りをぐるぐる回り、鬼ごっこをしているみたいだ。 完全に俺は蚊帳の外だ。それに嬉しくなかったのは少しばかり残念。 「裕……ちゃん……」 澪が俺を覗き込む。何かを口ずさんでいるけど小さすぎて聞こえない。 「な、なあっ! 私がお前を名前で呼んでやるよ……」 声も震えており必死に振り絞って出したかのような言葉だった。 「澪、無理しなくていいんだぞ? いつも通りでいいからさ」 「いや、名前で呼ばせてくれ。お前は……特別だ」 特別という言葉がどうも印象的だった。澪は俺から視線を背けると再び笑みを見せた。 俺は澪と仲直りすることが出来たんだよな?
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