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「裕君、もうしばらくここにいようよ」
杏里さんが俺の横にちょこんと座って体を寄せてきた。
「そうですね。俺も帰る理由が無くなりましたし」
「帰る理由?」
「あ、こっちの話です」
澪が今日の全てだったしあいつが元気になってくれただけで何よりだ。
しかしさっきから琉李子さんが横目でちらちらと俺を見てくることには何か意味を成しているのか?
「……うっ」
突然視界が歪むとともに体がぐらついた。
「裕君?」
「あ、はは、だいじょ、ぶです……」
実際大丈夫じゃない。体の中から一気に吹き上げてくるような何か。体が熱い。
全身に炎を纏っているかのような感覚に襲われる。熱い。火傷しそうだ。
「裕君!?」
「お、おい!」
杏里さんと澪が心配する中で俺の意識は暗黒の闇へと吸い込まれた。
琉李子さんのこれ以上ない妖艶な笑みが最後に目に入ったものだった。
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