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杏里さんが運転する中で俺の腕は杏里さんの胴にしっかりと巻き付けてある。別に変なことは思ってはいない。
僕にしがみつかないと落ちちゃうよ、の一言により俺は恥ずかしながらも体を支えてもらってるわけだ。
香り漂ういい匂いが俺の思考を変にさせる。
「裕君、急な話なんだけどね。僕のことは杏里さんって呼ばないでほしいな」
突然出た言葉。顔を上げても運転している杏里さんの表情は分からない。
一体どんな気持ちなんだろう。
「杏里さんは杏里さんです。他に呼び方は考えられませんよ」
「せっかくちっちゃな頃の裕君に戻ったわけだし……杏里ちゃんって呼んでよ」
俺の心臓が大きく跳ね上がった。
「杏里ちゃん!? 無理ですよ、そんな呼び方」
「だって昔は杏里ちゃんだったもん。その体で杏里さんや敬語なんて全く似合わないぞっ」
杏里さんはイタズらしい声で言った。いきなり意識を変えれるはずもない。
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