憂鬱、ちっちゃな少年

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一番の問題は母さんだ。無類のイジメ大好きマザーでその標的はいつも俺だった。 昔は幾度となく母さんに遊ばれる始末。この点で見れば紫音よりも凶悪だったかもしれない。 案外母さんと澪は性格が似ているかもな。 「ちょっと家に戻るのが嫌で。杏里ちゃんの家に行こうよ」 「だって僕の荷物は全部ここにあるよ。それに僕はお母さんとケンカしてるんだもん」 俺はこの一言が嘘だと一瞬にして分かった。以前からそうは思っていたけどな。 仕方ない、母さんに見付からないように迅速なるスピードで部屋に駆け込むしかない。 玄関のドアを開けた俺は冷や汗をかいた。靴が多い。よりにもよってこんな時に客か? 「裕ちゃんのお母さん、このクッキーとっても美味しいですっ!」 「そう? よかったら持って帰ってもいいのよ?」 わずかながら声が聞こえる。紫音だ、奴もいる。
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