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そして事態は最悪の展開を向かえる。
「あら、杏里ちゃんおかえりなさい」
「あっ、ただいまです」
母さんがやってきた。一番会いたくない相手。俺は身を潜める。
「杏里ちゃん一人? 裕大も一緒に出掛けたように見えたんだけど」
「嘘吐いてたの? お姉ちゃん」
「いや、その……あはは」
杏里さんも限界みたいだ。俺がどこまで知り合いの男の子を演じることが出来るのかが問題になってきそうだ。
顔を上げるととっさに母さんと目が合った。
「……」
両者しばしの沈黙。そして……
「おかえり裕大」
母さんの一言で全てが凍りついた。紫音も杏里さんも、当然俺も。
「さてと、晩ご飯の準備をしなきゃね。裕大、行儀よく待ってなさい」
その台詞を最後に母さんは台所へ向かった。紫音が口をパクパクしながら俺を見ている。
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