願い、おにいちゃん

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「あちゃー、雨降ってるよ」 これにはさすがに驚いた。出発時には青空がいっぱいに広がっていたのに今ではグレー一色に染め上げられている。 こんなこともあるんだな。天気予報チェックしとけば良かった。 雨はそこまで激しくはないけど少し歩けば服や髪はびしょびしょになってしまうだろう。 無駄にデリケートな俺は雨が嫌だったりする。 かえって俺の隣の女の子は妙に笑顔である。 「澪、機嫌よさそうだな」 「まぁねぇ」 無邪気な声だ。晴れより雨を好むのか。少し変わってるな。 「じゃじゃーん」 なんとまあハイテンションで俺の前に何かを突き出した。若干紺色の長くて細い…… 「傘?」 「あったりー」 すると澪は傘を広げた。俺にとってそれは大きく見えた。 雨から守ってくれる唯一の光。 「しかしこんな傘、どっから出したんだよ」 「秘密なのだよ」 ふーん、気になる。
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