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「お兄さんって……」
「何言ってんだ? 私の目の前のちっこい奴だよ」
澪の前のちっこい……俺?
「今は無様な姿をしてるけどお前は私のおにいちゃんだ。私の大事な……おにいちゃんだ」
澪がここまで言ってくれるなんて思ってもみなかった。単細胞と唄われていた俺は単純に嬉しかった。
「そうか。ありがとな、澪」
「ふんっ、おにいちゃんは礼を言うもんじゃないんだよ」
普通なら頭を撫でているところだが体が小さい故にその行動すら行えない。実に悲しいものだ。
俺が澪のお兄さんか。俺はリョウさんの代わりになれるのかな?
「知ってるか? 相合い傘は本当に好きな人としかしないっていう話があるんだぞ」
「相合い傘って今やってんじゃねぇかよ」
「その通り。大好きだぞ、おにいちゃん」
澪の笑顔がとても眩しかった。こんなとびっきりの笑顔は初めて見させてもらった。
澪にこう言われた以上守らなきゃいけないよな。俺は澪のお兄さんだ。
リョウさんに負けないくらい信頼を得てやる。澪には傷ひとつ付けさせない。
止みゆく雨の中、小さな俺は大きな決意を胸に抱いた。
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