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「むぅ、毎度毎度遅いぞ裕君」
「あ、まぁちょっとした用事があるもんで」
頬を膨らませた杏里さんが俺に近寄ってきた。かなりご立腹の様子。
奥では澪が静かに本を読んでいた。もうすでに見慣れた光景そのものだ。
「だって裕君、最近僕にかまってくれないし。ぶー、だ」
振り返ってみれば、昨日一日は澪と遊んでたし。この体になっていろんな人達に振り回されているからなぁ。
「うぅ、ごめんなさい、杏里さん」
「はぅっ! そんな裕君もかわいいよぉ」
杏里さんは俺を抱き絞めて頬擦りをしてくる。思うように体が動かせないのが難点だ。
俺を包む豊満な胸にニヤニヤしてしまうのは秘密である。むしろずっとこのままでいてもいいかもしれない。
ふと杏里さんの顔を見た。汚れなき薄ピンク色の弾力性のありそうな唇。
一瞬ドキッとした。理由は分からないけど急に顔が熱くなったような気がした。
杏里さんが相手なら――
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