風物詩、夏祭り

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俺の視界には走ってこっちに向かってきているであろう杏里さんの姿が確認できた。 が、 「あっ!」 「あっ……」 こけた。杏里さんがこけるのを見るのって久しぶりだなぁ。 いやいや、今はしみじみ思っているところではない。杏里さんの服装、祭りでは定番の浴衣だ。 おそらく足絡んじゃったんだろうな。あんなのじゃ走りにくいだろうし。 心配になったので近付いた。 「杏里さん、大丈夫ですか?」 「いたた、えへっ、やっちゃった」 顔は笑っているが目は潤んでいる。痛くないわけないですよね。 「これで涙拭いてください」 俺はポケットからハンカチを取り出した。必需品だもん。 「うん、ありがと裕君……」 杏里さんは立ち上がって涙を拭った。うむ、やはり杏里さんは泣くような人じゃいけない。 でもこけたってことは大事な浴衣が汚れたんじゃないだろうか。 破れてなきゃいいけど。
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