風物詩、夏祭り

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「うふふっ、今日は何を食べよっかなぁ?」 暗くなりつつある空の下で杏里さんが口を開いた。考えていることは俺と同じかもしれない。 少しだけ思い出した。杏里さんは紫音ほどではないが鉄の胃袋を持った人だ。特にイベントなどの時は食べて食べまくる。 杏里さんの胃袋は満タンなのに俺の財布の中身はすっからかんになってしまったのは言うまでもない。 「杏里さん、今日のノルマは?」 「うーんと、お腹いっぱいになるまでかな?」 終わりのない目標だ。正しく言うならば、俺の財布の中身がなくなるまで、だろう。 「でもね、今日は裕君に奢ってあげる」 「いいんですか?」 「うん、裕君にはお世話になってきたから。それにかわいいからね」 かわいいは余計じゃないかと思いつつ足を動かす。奢ってくれるなら嬉しいことこの上ない。 次第に祭り会場の電灯が見え始めてきた。
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