風物詩、夏祭り

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「そうだ、杏里さん探さねぇと」 朔真に会ってから大事なことを忘れていた。とんだ邪魔が入ったものだ。 「お前の姉ちゃんか?」 「ああ、そんなところだ。ちょっとはぐれちまってさ」 「何かと大変なんだな」 呑気な奴。人事みたいに軽く流しやがって。 ……人事か。 「俺は杏里さんを探そうと思うけど、朔真はどうするんだ?」 「城石裕大、まさかオイラをこの場に放置しようとか思ってないだろうな?」 「……思ってたけど?」 「さらっと言うな!」 朔真の大きな声が耳に響く。こんな近距離で大声は無しだろ。 「よし、俺もお前の姉ちゃんを探してやるよ」 「うえっ!?」 「そんな露骨に嫌そうな顔するなよ。それに城石裕大の姉ちゃんがどんな人か見たいしさ」 面倒な奴を仲間に入れてしまったようだ。断っても着いてきそうな予感。 「勝手にしろ」 そろそろ心配になってきた。早く見付けないと。 星に満ちる夜空の下で俺は動き出す。
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