風物詩、夏祭り

24/52

21717人が本棚に入れています
本棚に追加
/526ページ
ダメだ。いくら動き回っても限度がある。 声で呼ぼうにも騒がしくて声が届くわけでもないし、近くにいる人からは冷たい視線を浴びてしまうだろう。それだけは避けたい。 そして人の多さにうんざりしてくる頃合い。毎年こんなに溢れかえるくらい人がいたっけ? 着いてくると言った朔真もいなくなってるしどうしたものか。 「城石裕大、ジュース買ってきたぜ」 急にいなくなり急に現れる。朔真よ、これが理由か。 「朔真、何を呑気に」 「いらねぇの?」 「……貰っとく」 朔真からジュースを受け取り、喉を潤した。うめぇ。 しかし朔真の表情。これは女の子に間違えられて当然かもしれない。 男に狙われないことを少なからず願っとく。 「なぁ城石裕大、慌てて行動してもいいことないぞ」 朔真が真っ直ぐに俺を見据えて言った。 「俺、慌ててるか?」 「うん。姉ちゃんが心配なのはよく分かるけどまずは落ち着いて。平常心平常心」 ほぅ、朔真にしては珍しいこと言うじゃない。
/526ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21717人が本棚に入れています
本棚に追加