風物詩、夏祭り

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「オイラだって部活やってんだ。少なくともお前より精神面は鍛えられてんだ」 こいつは部活をただやってるだけじゃなかったんだな。ちゃんと得るものがある。 小さな朔真が大きく見える。ちっ、悔しいがかっこいいじゃねぇか。 「ははっ、サンキュな」 「よかったら教えてくれよ。お前の姉ちゃんのこと」 朔真は興味津々の様子で目を輝かせて近付いてきた。 「……大切な人だ」 「大切?」 「そうだ。家族、自分、それ以上に大切なんだ。俺はそんな人を失うわけにはいかない」 俺は杏里さんに昔も、今もずっと言葉では言い表せることのできないほどお世話になってきた。 恩を返したいとは思いつつもその件は俺の性格、杏里さんの性格からしてまだ先になるだろう。 それでも俺は…… 「分かった。城石裕大の姉ちゃんって優しい人なんだろうな」 「その通りだ。ぐずぐずしていられない。さっさと行くぞ」 ジュースを全て飲み干し俺は歩き出した。後ろで何か聞こえたのはあえて気にしない。
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