風物詩、夏祭り

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(――裕君) 俺の中の何かが反応した。誰かが俺を呼んでいるかのようだ。 「んあ? はひかあっはか、城石裕大」 三杯目のかき氷をがつがつと食べながら朔真は俺に問う。食うか喋るかどちらかにしてほしいものだ。 (――た……け、裕君) 妙な胸の痛み。騒音とも等しいこの祭会場の中で俺の中にはっきりと届くこの声は…… 「杏里さんだ、近くにいる」 「うへっ? ほうなのか?」 いつの間にかき氷から焼きそばに切り替えたんだ? よく食う奴だ。 と、今は朔真に構ってる暇はない。 「おい、待てよ。オイラを置いて行かないでくれ」 朔真の声も耳に届かず。気付けば俺は無心で走り出していた。 人混みを華麗に回避しながら杏里さんというひとつのゴールへ突っ走る。 どこか、不安だ。厄介事に巻き込まれてなければいいが。 しかし、間違いなく近くにいる!
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