風物詩、夏祭り

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「ガキは黙らせねぇとな」 リーダー格が両手を合わせてパキパキと骨を鳴らしている。男なら誰でもがやるあれだ。 強気で攻めているようだが実は勝てる気がしない。さすがにここまで格差があると…… 杏里さんは助けなければ。しかしどうすればいいんだ? 「おい、お前ら何してる?」 俺も男達も誰かの声によって動きを止められた。その人は男達の後ろにゆらりと立っている。 「る、琉李子さん!?」 悪に染まったその表情、背景には闇がとても似合いそうだ。そこには俺の見たことのない阿修羅が立っていた。 「やべえ、こいつ大崎だぞ」 「このままじゃ殺られる!」 そう言うと男達はあっさりと逃げていってしまった。対する俺も足がすくんで動けない。 「少年」 再度見た琉李子さんはいつもと変わらない柔らかい表情で俺を見ていた。 「大丈夫か?」 頭の上に優しい感覚。俺の目の前に琉李子さんがいる。
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