風物詩、夏祭り

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「る、琉李子さん、どうして……わっ!」 一瞬足元がふらついた。そしてすぐ近くからふわりといい匂い。杏里さんが膝をつき、俺に抱きついた。 「こっ、怖かったよ……裕君、裕君……」 次第に俺を抱き締める力が強くなる。元はと言えばはぐれた俺が悪いわけだ。 俺はそっと杏里さんの頭の上に手を置いた。 「杏里さん、俺はここにいます。安心してください」 杏里さんは顔を上げた。目は真っ赤で今にも泣いてしまいそうな表情。よほど怖かったのだろう。 「裕君……うわあぁぁあん!」 星が降り注ぐ空の下。一人の少女が俺の前で涙を流す。 俺より小さく見えるその少女の前で俺は何ができる? 慰めるか? 気付けば俺も抱き締めていた。もう放さない、絶対に杏里さんを放したりなんてしない。 「いやぁ、感動感動」 それはそうとなぜ琉李子さんが?
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