風物詩、夏祭り

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「杏里さん、落ち着きましたか?」 「ぐすっ……うん」 ありったけの涙を流していた杏里さんがようやく泣き止んだ。俺は失礼極まりなく頭の上に手を置かせてもらっている。 こう見るとどっちが年上なのか分からないかもな。 「やっぱり裕君は僕の大事な人だよ」 「そう言われると照れちゃいますよ」 目は真っ赤にしろ、いつもの笑顔に戻ってくれた。 俺はこの笑顔を見るために生きていると言っても過言ではないかもしれない。 「あっ、澪子ちゃんも来てたんだね」 「こんばんは、杏里お姉さま」 澪は杏里さんに深く礼をした。俺には絶対に見せてくれない行為だ。 よく見れば澪は杏里さんとは違ったピンク色の浴衣に身を包んでいる。 キツイ澪もやはり女の子。浴衣はかなり似合っている。さらにピンク色もなかなかセンスがいい。 「澪、その浴衣似合ってんぜ」 「……っ!」 無言でうつ向いてしまった。地雷を踏んでしまっただろうか。
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