風物詩、夏祭り

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「うぅ……城石裕大……」 ゾンビのように這ってくるな。気持ち悪いわ。 「この子、裕君のお友達?」 杏里さんが気味の悪いゾンビを見て言う。杏里さんと朔真が会うのは初めてだな。 「こいつは――」 「城石裕大の姉ちゃんですね。朔真っていいます。よろしくお願いします」 何をお願いするんだ? それに以前から練習していたかのようにすらすらと自己紹介。 「朔真ちゃんだね。僕は杏里だよ、よろしくね」 「あの、オイぶるあっ!」 朔真の頭を一度どついて杏里さんと距離を取る。 「なんだよ、痛いだろ」 「お前、オイラ男なんですけど、みたいなこと言おうとしてたろ」 「ああ、いけないのか?」 うん、普通ならそうなるな。 「ああやって言ってるんだ。杏里さんの前じゃ女でやり通せ」 「おいおい、バカ言うなよ。オイラの体から溢れ出すワイルド感が分からないのかい?」 目潰し。 「いぎゃあぁぁぁあ、目があぁぁぁ!」 「分かったな?」 「はい……」 うるさい奴だ。
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