風物詩、夏祭り

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花火ってやつはなんて綺麗なんだろうと深く感動する。 壮大な爆発音と共に弾けるそれはまさに花という名にふさわしい。 ったく、こんなものを作ることができる人達には脱帽だ。 俺らしくない、しみじみと思っていると視界に映っていた花火が姿を消した。 唇には暖かいもの。そして誰かの顔……? 次に花火を確認できたのはそれから三秒足らずといったところ。俺は不思議に思い、横を見た。 「杏里……さん?」 花火の閃光で照らされる杏里さんの顔は真っ赤になっていた。 「あのね、裕君にはずっと感謝してる。それで、分かったんだ。僕は裕君のことが――」 どくんっ。 な、なんだ…… 「あ……がっ……」 「裕君!?」 心臓か? 心拍数の高さが尋常ない。 加えて体全体が熱い。燃やされてるみたいだ、耐えきれない。 「どうしたの!? 大丈夫!?」 「……りさ……お、れ……」 俺が最後に見たのは今にも泣いてしまいそうな杏里さんの表情だった。
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