風物詩、夏祭り

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――ここはどこだ? 辺りは一面真っ白。汚れなきこの場所は常に整理されているかのようだった。 整理といっても何もない。四方八方見渡せど終わりのない空間。 誰もいない。声も聞こえない。まさに無の空間だ。 『ふえぇぇぇぇん!』 『あんりちゃん、大丈夫?』 突如懐かしい雰囲気を思わせるビジョンが映し出される。 一人の女の子と一人の男の子。そしてこの男の子は間違いなく俺だ。 ということは女の子の方は杏里さん? 『あんりちゃん泣かないで。僕がついてるから』 『うっ……ほんとう?』 『うん。僕はあんりちゃんを守ってみせる。約束だよ』 『……ありがとう、ゆうくん』 幸せそうな女の子の表情。これは一昔前の俺を指しているのか? こんなことがあったかどうかは定かではない。俺は物忘れが激しいから。 にしても、平和そうだな。
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