風物詩、夏祭り

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そして、同時に小さな俺はこう言っていた。 守ってみせる、と。 昔の詳しいことなど誰も覚えちゃいない。しかしここにビジョンがあるということは記憶の片隅にあったというわけだ。 杏里さんを守りたい、泣かせないという気持ちは今も変わらない。 この記憶は、俺の中の何かを暗示させているのかもしれない。 『あんりちゃん、行こうよ』 『……うんっ!』 鮮明に映っていたビジョンは消えた。再び真っ白な空間へと舞い戻る。 ――誰かのすすり泣く声が聞こえる。 ――泣くなよ。俺はここにいるよ。 ――あなたには涙は似合わないよ。 ――あなたを守ってやるって決めたんだ。 そうだろ? 杏里さん……      
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