風物詩、夏祭り

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取り残されたように感じる夏の夜。はっきりと曲を描く三日月が顔を覗かせていた。 「琉李子、どこに行ったんだろう」 遠くを見ながら杏里さんは言う。 「うーん、さすがに分からないですね」 「そっか。もー、琉李子ったら」 突如現れ、颯爽とどこかへ行ってしまった琉李子さんに対してしかめっ面を見せる。 三人がどこに行ったかなんて知ったことはない。しかし気になるのは別れ際に言われた一言、 ――頑張れよ。 これが何を意味するか、琉李子さんは一体何を企んでいるのか。 「仕方ないね。裕君」 杏里さんの言葉に、はっと我に帰る。 「場所移動しよ。ここじゃ落ち着いて花火も見れないからね」 杏里さんは屈託のない笑顔を俺に向ける。俺もそれに答えるように笑顔を作る。 当たり前になったかのように俺達は再び手を繋いだ。今回こそは離したりしない。 杏里さんの歩くスピードに合わせながら賑わう祭会場を軽快に歩く。
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