壱 負け犬も歩けば云々

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 俺も帰る仕度を整えると、さりげなく木島に聞いてみる。 「すごい人ですね。そうじゃありませんかね? 確かにああいった風に奇人変人ぶりを発揮しますが、ここぞというときには誰よりも頼れる存在になるでしょうね。ああ見えても、心の奥底では論理が展開しているようにも見えます。学力的な面でも、精神的な面でも、大いに尊敬していますよ。少なくとも――彦坂先輩 よりかはいい意味ですごい人です」  それでは、と木島はそのまま保健室から出て行った。  ズバリ。  先輩という位置の俺に対して、一縷の躊躇いもなく言ってくる。さすが、[高気圧]木島。最初ほとり先輩が木島のことを[高気圧]という記号を付けたのも大きく頷けるわけで。恐らく、高圧的、といった単語から派生して、意味合い的なことで、その記号を木島に付けたのだろう。  一年生でも、他人を、先輩を、容赦なく見縊る。  それが、木島のGHQらしさというか、個性的な部分。いい意味では決してないけれど。  ちなみに赤松が[姫]、リーダーが[プロニート]。[姫]というのは、ほとり先輩が記号付けし、リーダーはほとり先輩同様自称。引きこもりなのだ。  せめて、学校には来て欲しい。そのほうが、このGHQも盛り上がるだろう。  俺は軽いため息を吐いて、外へと向かった。
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