壱 負け犬も歩けば云々

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 GHQ。今日、話した通りGHQに入った今でも、俺は具体的なGHQの活動を知らない。俺は時間を潰す為に、あの保健室に甲斐甲斐しく通ってはいるけれど。楽しいものだから、それはそれでいいわけで。でも、所謂ほとり先輩の言うように、何か大きな出来事に巻き込まれるのは御免被りたい。目立つのは、晒さ れるということだから。昔の俺なら、堂々と目立とうとしたかもしれない。でも、今は違う。空から叩き落された鳥のようなもの。落ちてしまった俺を、見ないでほしい。俺は目立たず、楽にのんびり過ごしたいのだ。例え後ろ指指されるようなことになっても、それでも前に出るようなことはしたくない。  でも、恐らくほとり先輩は俺と逆。俺が日陰を歩いていくことを切望しているのなら、ほとり先輩は劇場でスポットライトを浴びながら物語の主役を演じることを熱望している。明るく激しく、楽しむことこそを思考の喜びにしているに違いない。  思えば、俺はあの役立たずリーダーと同じなのかもしれない。リーダーは、引きこもってゲームばかりしている。最近はアニメばかり見ているとほとり先輩から聞いているけど。リーダーがGHQにいる理由は、ほとり先輩がいるからという理由。そのあたりのことは俺にもよくわからない。そもそも、リーダーとは二 回しか顔を合わせたことがない。話にはよく聞くけれど。ただ、通じるものを感じてしまう。日陰者、という面において。  木島は勉強面で目立っている生徒だし、赤松だってそうだ。あのお姫様は何もしていないけれど、目立っている。まぁ、それは当たり前なわけで。  俺は……。  所詮、負け犬。ただ、遠吠えるということはしたくない。  死んだように生きていければ、十二分だ。  俺にとってGHQは時間の有効活用場所。負け犬としての俺の居場所。確かに周りには別の人種ともいえる人々がいるかもしれない。でも、記号付けされるような生徒ということで、繋がる部分もある。楽しいと思うこともある。だから、俺はGHQにいる。  これからも。
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