弐 姫は三年の恩を三日で云々

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 といっても……やっぱりお姫様はお姫様。ほとり先輩の変態具合とまではいかないまでも、ずれているわけで。日常生活に支障をきたす程に。さすが、GHQメンバー。 「で、そういうことになってるんだけど、赤松はどう思う?」 「よく、わかりませんのですけど?」  だよな、と俺はぼやいた。ほとり先輩から三回も繰り返し説明を受けた俺ですら、まだ曖昧にしか分かっていないわけで。ほとり先輩から渡された、事件について軽くまとめられた紙を見ても、具体的なことは書かれていないし。そんなあやふやなことしか分かっていない俺が、どうして何も知らない赤松に説明できる っていうんだ。無理、確実に不可能。それでも赤松には一応、事件と呼べることについて、話しておかないといけない。 「えーっと……」  できる限りのことはした、自分の中にある情報を搾り出しきった。だから、これ以上噛み砕いた説明、分かりやすい話はできそうにない。むしろ俺がもっと説明受けたい。でも、今保健室には俺と赤松しかいない。ほとり先輩は用事があるとか言って、出たっきりだし。 「では、もう一度最初から今回の事件を整理するとしましょう。彦坂君も、その方が分かると思いますからね」  赤松がホワイトボードに近付き、マジックペンを握る。そのままマジックペンの蓋を外して、ホワイトボードに文字を書き始める。相変わらず字が上手い。 『謎のテスト事件』  赤松は、今回の事件について、そう書き記す。  それは、まさにストレートな表現。 「謎のテスト……ね」 「間違いないでしょう?」  確かに、その通りなわけで。俺たちの目の前にある事件は、テストに関すること。一学期の、中間テストにおける出来事だ。ただ、謎の、という言葉が似合っているかどうかは分からない。いまひとつピンと来ない。 「テスト――ええっと……」 「まず、相談者、近衛君について」
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