弐 姫は三年の恩を三日で云々

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近衛。その二つの文字がホワイトボードに書かれる。近衛大地、この県下ナンバーワンの高校の中でも群を抜いて賢い二年生。俺も、同じ二年生だからよく知っている。俺の中では完全に天才扱いだ。どんな状況下でもテストの点は常に九割超え、そんな完璧な男。 「近衛が今回のテストでおかしな部分があるって、先生に抗議しているんだけど、相手にされなくて……。それを知ったほとり先輩が、近衛から話を聞いて、解決に乗り出したってわけだ」 「そのテストが、数Ⅱ。担当教員は橋本ですわね」  そうそう、と俺が頷く。 当然、二年生である俺も赤松も中間テストとして、近衛同様受けたテスト。俺の点数は、果てしなく悪いものだったけれど。 「ちなみに赤松って、あのテスト――」 「八一点でしたわ」  ほとり先輩&木島=天才クラス。赤松=秀才クラス。俺=平均点と仲良しクラス。リーダー=ニート。 分かっていたけれど、数字って時に残酷なわけで。俺よりも数十点上の点数を取っているとなると、さすがに衝撃を受ける。どうやったらあのテストでそんなに点数が取れるのか。俺にはさっぱり分からない。橋本がテストに出題する問題は教科書の応用問題を三回くらい捻った問題だ。素直に解こうとしても、絶対解け ない。 「俺の点数は割愛して……、と」  赤松は俺の学力レベルを知っているから、言及してこない。それに、赤松は「私が点数教えたのだから、あなたも教えなさい」とか言い出すタイプではない。そもそも、この学校自体、点数を言わない人間は、自然と放置されるという風潮がある。 「閑話休題。本題に戻りましょう。あの数Ⅱテストはどうしても難しい問題が最後の方に集中してありまして、そのせいでほとんどの生徒は、八十点台ですわね、私もまたその一人」  点数配分は、三点が三十三問、ラストの極悪百点阻止問題が一点。おおよそ、最後に並んでいた解けるものなら解いてみやがれオーラを感じさせる問題にやられてしまい、ほとんどの賢い生徒が、赤松の言うとおり八十点台に集中しているらしい。俺はその難解な問題は解く前に諦めたけど。 「それで、九十点以上だったのは三人なんだよな。相談者の近衛と、あの歩く電卓女、香村幸美。残り一人は不明……で、その不明の誰かについてが、今回は問題になっているわけで」 「そのようですわね」
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