弐 姫は三年の恩を三日で云々

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「九十点以上は三人、近衛、香村、もう一人の誰かだろ? それで、回収される前に香村が九九点で二位なら、一位は近衛でもなく香村でもない誰かの百点ってことになる。九九点の上には、百点しか存在しないし。でも、そうなったら矛盾が発生してくる……のか?」  ほとり先輩は「確かにこれは何かあるね、おかしいよ」と言っていた。近衛も、おかしいと橋本に実際に激しく抗議している。  このテストのこの結果は、あまりにもおかしい、と。 「……」  赤松がホワイトボードに回収前、回収後、その両方の近衛と香村の点数を書いていく。そして、それを書き終えると、俺のほうに向き直り、冷静な表情で口を開いた。 「近衛君が回収後に九九点で二位、香村さんが九六点で三位、四位は八十七点の五人。ということは、一位は、どちらも百点ということになりますわね。そうでなければ、回収前の香村さん、回収後の近衛君が二位ということは有り得ませんから。けれど……確かにおかしいですわね。今、気づきました。回収前も、回収 後も、両方百点なんてことは有り得ませんもの。そんなことは、起こりえないことですわね」 「なんでだ? どこかおかしいか?」  ん? と俺は赤松に疑問を投げつける。 「何故なら、回収前に百点ということは本来不正解の部分が正解になっていて、百点になっているのですから。だから、回収前に百点だったとしたら、回収後は当然三点減点されて、九七点となっていなければなりませんわ。それなのに、回収後も百点を維持していますのね、その名も知れない生徒さんは。これは、明ら かにおかしいことですわね」 「それなら、回収前の百点と、回収後の百点は別の生徒なら、問題ないことないか?」  そう言い返すと、赤松はうふふ、と笑ってから、 「四位が八七点と分かっている以上、九十点以上は三人。近衛君、香村さん、そしてもう一人。だから、そのもう一人の方が両方百点をとっているということですわ」
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