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何か報告されることがあるのかと赤松がホワイトボードに向き直る。けれど、ほとり先輩は「ごめん、違うー」と言いつつバッグの中を弄った。まさに、『まさぐった』。そのいやらしい手の動きといったらもう、表現しきれない。どうしたら、あんな風に手が蠢くのか、俺にはさっぱり分からない。バッグの上からでも分かるということは、相当とんでもない動きをしているのだろう。
「じゃあ、なにをしていたんです?」
「あぁ、そういえば――」
そこで、赤松が思い出したかのような素振りを見せる。けど、それは期待するような反応ではなくて、いつものほとり先輩の奇行を見ての赤松の反応だった。
赤松はほとり先輩の《変態》的行動に対して寛容だ。そもそも赤松自体が、すべてに対して穏やかな反応を取る。余裕がある、といった表現が正しいのかもしれない。さすが、お金持ちなお姫様。
「じゃじゃん!」
ほとり先輩はガラガラ、と束になったDVDケースを、保健室の机に乱雑に広げる。机に広がっていく、ほとり先輩ワールド。
「うお」
「ふぁ……」
さすがに、俺も身を一歩引いた。赤松はぽかん、と口を開けた。
「『真夏の浜辺ナンパ、即チョメチョメ』シリーズ! 『たっぷり素人巨乳』シリーズ! 『おねえさんと僕は……』シリーズ! 全部安かったから、一気に買っちゃったんだよね! あのアダルトショップの中古DVDはセールですごく安くしてくれるし、店長と仲良しになっちゃってオマケもくれて、超最高っ! 今日は眠れないって、やばいってー! ぐふふふふ」
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