壱 負け犬も歩けば云々

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 確か、帰宅部だという事実を知らされたのは、ほとり先輩に拉致されて、保健室で部活紹介を受けている最中に初めて知ったという記憶がある。いかがわしい名前の団体だとは思っていたけれど、ちゃんとした意味があるとは思ってなかった。意味があったとしても、なかったとしても、勢いだけで俺はGHQのメンバ ーにされていたと思う。ほとり先輩は、まず間違いなくそういう人。  と、ある程度思い出が頭の中でぐるぐる回転したところで、俺は再び歩を進め始めた。今日もまた、俺は保健室に向かう。なんだかんだ言っても実際、あのGHQは暇つぶしにはもってこいなわけで。勉学を放棄した俺にとって、放課後は暇を持て余してしまう。かといって、バイトはしたくない。そして、放課後たっ ぷり遊ぶような不真面目な友達もいない。だから、GHQ。  そういう意味ではほとり先輩には感謝しているわけで。居場所を作ってくれたという意味で。  ……といっても、俺としては……その……もう少しメンバーがアレというか、ほとり先輩自身がもっとアレだとか、ともかくその部分は、なんとなく変な感情を持ってしまう。といっても、俺たちは全員、同じ穴のムジナ。自分のことを棚に上げられないわけで。でも、同じ穴のムジナといっても、少なくとも他の四人 よりも俺はまともだと思う。誰かが割り振った俺の記号って[負け犬]だし。[姫]や[変態]、[高気圧]、[プロニート]には敵わないはずだ。特に自称[変態]――ほとり先輩は異常。確かにGHQに入れてくれたこと自体は感謝しているけど。あんな女子高生はアニメや漫画の中のキャラクターだけで十分なわけで。見ているぶんには面白いのだけど、実際に話をしたりするのは、それなりに精神的にハード。でも、それがまた楽しいのかもしれない。違和感もあるけど、楽しみ でもある。自己矛盾なわけで。あれ?
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