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アキオがクラの肩口から教室を覗くと、一つの机に一輪挿しが置かれていた
その横で下を向いているのは同じクラスの木場郁子だった
『幽霊が出たー!』
『ギャハハハー』
『こえー!』
その木場の回りに座った何人かが囃し立てていた
遠巻きに女子も固まってクスクス笑っていた
『今度は木場か…』
クラが呟くのを押し退けて、アキオはつかつかと木場に近づいた
そして、木場の机の上にある一輪挿しを掴むと木場に言った
『何これ?いいじゃん。木場ぁ、これお前の?』
木場は怯えた目のまま、泣きそうな顔で首を何度も横に振った
『ならもらっていい?』
アキオは微笑むと、一輪挿しを掴み、自分の席へ歩いた
クラス中が静まり返り、成り行きを見ていた
アキオはわざと囃し立てていた男子生徒の近くを歩きながら
『幼稚な事してんなよ』
低く、しかし、しっかりと男子生徒の目を見ながら言った
そのアキオを男子生徒は、睨み返した
ピシリッと緊張が走る
『はい、ホームルーム始めまぁす』
その空気を、何も知らない担任の声が割って入ってきた
アキオは一輪挿しを机の端に飾り、にこやかに花びらをつつき、注意された男子生徒の用田は振り返りながら睨み続け、
クラはそれを見て、またため息をついた
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