Act.1 三人の泥棒

10/43
前へ
/214ページ
次へ
    パ―――――――っ!    クラクションの大音量が響き渡り、三人はハッと動きを止めた。  見れば、ホテルの前庭でいちゃつくカップルやら、門前の警備員やら、街中の浮浪者やら、とにかくそこら中の視線が三人の乗った車に集まっている。 「……」  カオルとニコが黙ったまま車を下りた。エジーディオもその後に続く。三人は通り中の視線から逃れるように、こそこそと車の陰に身を隠した。  物陰に逃げ込んだエジーディオは、カオルとニコの肩を、後ろから抱え込む。 「おい、てめぇら」  低い声で、耳元に囁いた。 「俺らが何しに来たか、ちゃんと覚えてるだろうな」  声音は静かだが、ドスがきいていた。掴まれた肩はちょっときしんでいる。  背後から伝わる怒りのオーラに、カオルとニコは身を縮めて明後日の方を向いた。 「……えーと……」 「…………泥棒、です」  ぼそぼそと小声で答える。そんな二人の頭に、エジーディオは容赦のない拳骨を見舞わせた。 「わかってんなら目立つ行動は控えろや、阿呆」      
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

579人が本棚に入れています
本棚に追加