Act.1 三人の泥棒

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   エジーディオ、カオル、ニコ。この三人の雇い主もまた、そんな企業家の一人だった。  最近ウェノビアにやって来て、瞬く間に街の上部に台頭してきた、謎の女性企業家。  エミリー。  雇われているエジーディオ達でさえ、彼女の事はそれ以上わからない。出身地も、年も、容姿すら不明。彼女の姿を見たことがある者は、誰一人としていないのだ。彼女の傍らには常に、クイーンと呼ばれる青年がついていて、大抵の用事は彼が代理で行っていた。そのクイーンが東洋人であるということも、エミリーのミステリアスさに輪をかけている。  エミリーは言う。 「敵の弱みを握ったひとが、最終的には勝つのよ」  彼女は汚い手を使うこともためらわなかった。  とんだ女狐だ。  だが、言ってる事は確かに真理。  エミリーはエジーディオ達三人を雇い、彼らにライバル企業の情報を盗ませることで、ウェノビアで一目置かれるほどの存在に、昇り詰めたのだ。  
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