579人が本棚に入れています
本棚に追加
カオルは満面の笑みでうなずいた。
「はい、解ってるんなら分かれても問題ないですね。じゃ、中で合流しましょう」
白い絹の手袋をはめながら、カオル。エジーディオもうなずく。
「わかった。んじゃ俺は裏口から行く」
「おっけー」
ニコが親指と人差し指でまるを作った。
「私は正面からです。ブルドックさんに協力してもらいますよ」
にやりと口の端を引き上げてカオルが言う。
「了解」
ニコは敬礼した。
そして真面目な顔で言う。
「僕は作戦Zで」
一瞬流れに任せてうなずきかけたエジーディオとカオルは、ふとニコを振り返った。
「作戦Z?」
そんな作戦はたてた覚えがない。
「……車で待機」
ぐ、と親指をたてて、ニコは得意そうに言った。
カオルが問答無用でニコの首根っこをひっつかむ。エジーディオに押し付けた。
「じゃ、エジー、こいつのお守もお願いします」
「ええっ、俺かよ、やだよカオル連れてけよ」
「私だって嫌ですよ。こんなの正面から入れると思ってんですか」
「だから僕車で待ってるってばー」
こんなの呼ばわりされたニコは、口を膨らませて不平をもらす。けれどそんなニコは無視された。舌打ちしたエジーディオが、仕方なさそうにカオルからニコを引き取る。
「ちっ、しゃあねぇな。こんなのでも盾ぐらいにはなるだろ。おら行くぞニコ」
「あのねぇ……エジーでかいんだから、僕盾にしてもはみでるよ? だから僕車で……」
「中に着いたら従業員通路の入口で落ち合いましょう」
「了解」
「…ねぇ、僕の話聞いてる?」
ニコの問いかけに、エジーディオとカオルは同時に振り向き、口を合わせて言った。
「「聞いてねぇよ」」
ニコがぶーと唾を飛ばした。
最初のコメントを投稿しよう!