Act.1 三人の泥棒

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  *    カオルは素知らぬ顔で、ラウンドイットに入っていく客達に交じり、彼女に近づいた。  たるんだ頬の肉。紅いカクテルドレス。威嚇するダチョウみたいな毛皮を羽織った、ニコ曰く、「ブルドック」さんだ。彼女は先ほどから、同じ場所に立ち尽くしていた。正面玄関に入る、階段の上だ。通りがかる顔見知りに話し掛け、時折高笑いをこぼしている。  それでも彼女自身が、ホテルに入ることはない。  要するに彼女は、エスコート待ちなのだ。上流階級の女性が、こういった場所にひとりで入るのは、はしたないことだとされている。事前に誰かを誘うことに失敗したのだろう。だから、ここで手をこまねいているのだ。 (お互い入れなくて困ってるんです。協力してもらいましょう)  カオルは内心でほくそ笑んだ。  
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