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警備員の一人が近づいてきた。
「失礼。コンサートのチケットを、確認させていただけますか?」
慇懃な態度で警備員。
マダム・ブルドックは、小さいが宝石がじゃらじゃらついて重そうなハンドバックから、今夜のコンサートのチケットを出した。警備員に見せる。
警備員はそれを受け取り、うなずく。次いでうながすようにカオルを見た。
カオルは懐に手をやった。しかし、あれ、といえ顔をしてぱたぱたと服を叩く。今度は青ざめた顔をして、ポケットの中身をひっくり返した。
天を仰ぐ。
「ああ、なんてことだろう! マダム、どうやら私は、コンサートのチケットを、家のテーブルの上に忘れて来てしまったようです!」
大げさな身振りを加えて、マダム・ブルドックに訴えた。
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