Act.1 三人の泥棒

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  *    歓楽都市の異名を持つ、アルウェイ国領の自治都市、ウェノビア。所狭しと並び立つ、ビルディングや看板を、極彩色のきらびやかなネオンが彩っている。眠らない街の夜はやかましい。宵染めの夜空では、地上の天国が放つ光に圧倒され、月さえその顔を出すのを恥じているようだった。  流れ星のように過ぎ去る明かりを窓に映して、エジーディオ・アルブレヒトの運転する車は、矢のように快楽の魔都を走っていた。  エジーディオはがたいのいいリギ人の男だ。年は二十三。車の天井に、頭をぶつけそうなほど背が高い。  短く刈り込まれた髪は、鈍い刃の色をしていた。耳には軟骨の方にまで、じゃらじゃらとピアスがはめられている。精緻な陰影の彫り込まれたピアスは、全てが銀製だ。しかも耳だけではない。口元や目元にも、銀の円形のピアスがはめられていた。眉が薄いということも相まって、彼の人相はすこぶる悪く見えた。革の上下に身を包んでいる。上着の中にはタンクトップを着ていて、その中に隠された肉体は、服ごしにも鍛え抜かれていることがわかるほど。彼を見て、喧嘩を売るような馬鹿はいないだろう。  
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