579人が本棚に入れています
本棚に追加
「エジーディオ、僕らって運がいいね」
小声でニコが言った。
彼らの境遇には同情するが、エジーディオもニコの言葉に同意する。
「神のご加護だ」
胸にぶらさげていた、焦げた十字架で祈りをささげた。
ニコがだらだらと腕まくりする。
「じゃ、あいつらの嫌ぁな仕事、僕らが代わりにやってあげよーかー」
年輩の運び屋が、ロックを解除したのを見計らって、エジーディオとニコは後ろから二人に襲いかかった。
若い方がみぞおちにニコの拳を喰らって、短い悲鳴をあげる。驚いて振り向いた年輩の運び屋に向かって、エジーディオが組んだ両腕を、頭上から振り落とした。
声もなく、運び屋は意識を失う。
「ごめんねー、ちょっくら服もいただいちゃいまぁす」
殴った拳をヒラヒラさせたニコが、言った。
運び屋に変装すれば、ホテル内を堂々と歩けるだろう。早速ニコは、若い方の作業着を脱がしにかかる。
きびきびと着替えるニコを尻目に、エジーディオはちょっとためらった。
「なぁ、その親父、明らかに俺よりちっさいんだけど?」
「ないものねだりはよくないよ、エジー」
ニコは容赦がなかった。
最初のコメントを投稿しよう!