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従業員通路の入口で、合流を果たしたカオルは、エジーディオを見るなり、吹き出しそうになって口を押さえた。頬がガマガエルのように膨らんでいる。
背を向けて、肩を震わせながらなんとか笑いの発作をこらえた。
「おいこらてめぇカオル。さすがにその反応はねぇんじゃねぇか」
顔を赤らめたエジーディオが、カオルをなじる。
「す、すみません……っ」
目尻に浮いた涙をぬぐって、カオルが振り返った。とたんまたブッと唾を吹き出して横を向く。
「苦労は察しますが、なんかもっとまともな服なかったんですか?」
笑いをこらえながら、カオルが言った。
エジーディオが着ている作業着は、今にもはちきれそうにぱっつんぱっつんになっていた。明らかに体格の違う運び屋の服を、無理矢理着せられた結果だ。
「あー、これでもがんばったんだよー。ズボン無理矢理あげたら、すね出ちゃってさー。格好悪いから洗い場から長靴盗んできて」
再びカオルが笑いの発作に見舞われた。
何もそこまで笑うことはないだろうが。
エジーディオは心底恨めしそうに、カオルをにらみつける。
「おらてめぇらとっととデータ盗んで帰るぞもう!」
乱暴に二人をうながす。
カオルとニコは、ニヤニヤ笑いを浮かべて、歩きだしたエジーの後に、ついてきた。
「照れてるんですか、エジー」
「照れてねぇよっ」
「顔真っ赤で説得力ないよ、エジー」
「うるせぇよっ」
このときばかりは、エジーディオはこの二人と組んでいること、心の底から後悔した。
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