Act.1 三人の泥棒

26/43
前へ
/214ページ
次へ
  *    従業員通路の入口で、合流を果たしたカオルは、エジーディオを見るなり、吹き出しそうになって口を押さえた。頬がガマガエルのように膨らんでいる。  背を向けて、肩を震わせながらなんとか笑いの発作をこらえた。 「おいこらてめぇカオル。さすがにその反応はねぇんじゃねぇか」  顔を赤らめたエジーディオが、カオルをなじる。 「す、すみません……っ」  目尻に浮いた涙をぬぐって、カオルが振り返った。とたんまたブッと唾を吹き出して横を向く。 「苦労は察しますが、なんかもっとまともな服なかったんですか?」  笑いをこらえながら、カオルが言った。  エジーディオが着ている作業着は、今にもはちきれそうにぱっつんぱっつんになっていた。明らかに体格の違う運び屋の服を、無理矢理着せられた結果だ。 「あー、これでもがんばったんだよー。ズボン無理矢理あげたら、すね出ちゃってさー。格好悪いから洗い場から長靴盗んできて」  再びカオルが笑いの発作に見舞われた。  何もそこまで笑うことはないだろうが。  エジーディオは心底恨めしそうに、カオルをにらみつける。 「おらてめぇらとっととデータ盗んで帰るぞもう!」  乱暴に二人をうながす。  カオルとニコは、ニヤニヤ笑いを浮かべて、歩きだしたエジーの後に、ついてきた。 「照れてるんですか、エジー」 「照れてねぇよっ」 「顔真っ赤で説得力ないよ、エジー」 「うるせぇよっ」  このときばかりは、エジーディオはこの二人と組んでいること、心の底から後悔した。    
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

579人が本棚に入れています
本棚に追加