95人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
1 女か虎か
「女か虎か・・・」
目の前にいる男が、ポツリと呟いた。
「はい?」
俺は、顔を上げた。
男はにっこりと笑って俺を見る。
「アメリカのミステリー作家、フランク・R・ストックトンが1882年に発表した短編小説さ」
「はあ・・・」
どうしていきなりそんな話をするのだろうか。
俺の疑問の表情に気付かないのか、男は淡々とした口調で続ける。
「舞台はとある未開の王国。王の権力は絶対的・・・。その国では、トラブルが起こったとき、当事者が闘技場に引き出される」
「はあ」
「その闘技場には二つの扉が有って、一つには飢えた虎が、もう一つには美女が隠されている。当事者はどちらかを選ばなければいけない」
俺は、相手の意図がつかめなくて、その顔を凝視した。
「さて、その国である時一人の身分の低い男が王女と恋をした。しかし、身分違いの恋は大罪だ。その恋は王に露見し、青年は闘技場に立たされることになった。
王女はなんとかどちらに虎が入っているかをつきとめ、青年に合図を送った。右だ、とね。青年はその通り、右を選んだ・・・」
男は、そこで言葉を切った。
最初のコメントを投稿しよう!