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「んじゃ、自己紹介な。その場で立ってやってくれりゃあいいから。」
ホームルームの流れのまま一限目。出席番号順にみんなが自己紹介していく。
携帯を握ったまま和樹はそれを真面目に見ている。意外だ。授業は聞かないのに。挙げ句に参加しないしなこいつ。
窓際の一番後ろというラッキーな席なのでそれを生かし、外をぼーっと見ていたらふと和樹が振り返って。
「ね、あの子可愛くない?」
「…また悪い癖すか和樹さん。」
「まだ手は出さないって。やだな、そんな目で見ないでよー。」
この好色男め。まだってなんだ、まだって。呆れていれば自己紹介は和樹の番。それに和樹は気付いていないらしく、教えてあげれば「え!」と急いで立ち上がった。
「えっと、橘和樹でっす。気軽に和樹って呼んで下さい。」
ああ、名字、橘だったっけ。すっきり。
へらりと笑う和樹に小声で女子の「あの人かっこよくない?」とか色々聞こえる。そうなんだ、和樹は結構かっこいいんだ。正直羨ましい。うん。羨ましい。
そして最後に僕の番。にやにや笑いながら「頑張れ!」と言う和樹にチョップをしてから立ち上がれば、笑われた。うぐ、チョップしなければよかった。
「神崎彼方です。あー…、よろしくオネガイシマス。」
ドキドキしながら席について溜息、こういうのは妙に緊張して嫌だ。終わった、と机にだらけていれば肩を震わせている和樹が視界に入る。
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