ハジマリの夏

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  私は栄口クンがお祈りを終えるのを待っていた。 それというのも数分前、この後暇ならお茶しようとさそわれたからである。   「お待たせ」   栄口クンのお祈りを終え、私たちは近くの喫茶店に入った。   「こんなこと聞くのもあれなんだけど、おじいちゃんの墓?」   「ううん、お母さん。なんで?」   私がそう言うと栄口クンは“しまった”という顔をした。しかし、私が“同情ならいらない”と言おうと口をあけると、微笑んで。   「そっか。なんか長く祈ってたから気になってさ。あ、同情はしないよ?オレもされるのは嫌だし」   「オレも…?」   「うん。オレも坂城と同じ」   私は、栄口クンに妙な親近感を覚えた。 それは“二人とも母親がいない”というわけではなく、目の前の『栄口勇人』という人物に魅力を感じるような親近感だった。
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