私の日常

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「ね、あのお店行こう!」  腕を絡めて街を歩く仲良さげなカップルの姿。幸せそうな笑顔と、弾む足音。 「いいなぁ……」  呟いたところで誰も聞いてはくれないことは私が一番良く解っている。私は独り、二人が歩いていった方角とは逆へと足を進める。目的地は、彼の家。  一応彼氏はいる。ただ、私達はいつからか絶対的に歪んでしまった。  さっきの位置からしばらく直線の道を歩いて、小さな公園を左に見ながら右に曲がる。その道を少し行ったところにあるアパートの二階、201号室が彼の住まい。 「スグル。ただいま」  ノックもせずに躊躇なく部屋に入り込んで、ソファで寝ている彼に声をかける。 「ん……ああ、ユウか。おかえり」  ふわりと笑う彼――スグルはまだ寝惚けているのか、私を求めるように腕を伸ばす。私は荷物を置いてから彼の要求に応えるように起きたスグルの隣に座る。 「ユウ」  私を呼びながらスグルは私を抱き締めた。互いに目線を絡ませて、キスをする。そして。
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